人と言うモノは一見して
その全てがわかるものではないですよね?
外見から解る部分は
ほんのごく一部
そこには虚飾もあれば鎧のような擬装もある
まして大人になればなるほど色々なモノを纏って
内に秘めた軟らかく弱い部分を守るために覆い隠しているものです・・・
俺のバイト先であるバーには
正社員である従業員が店長を含めて6名いたのだが
その中に地味な雰囲気を持つ極めて無口な独りの女性がいた
彼女は店専属のレジ係で
年中いつも同じ髪型、同じ化粧と服装
そしていつも夕方の4時ぴったりに出勤し
閉店30分後には必ずレジを閉め、勘定を合わせては帰るという
精密時計のような毎日を過ごしていました
しかし俺はそんな彼女に何かしら影のようなものを感じ
気を遣って何度か話しかけたりもしたのだが
その度に彼女は軽く微笑みひとつを浮かべる事も無く
聞き取りにくい小さな声で紋切り型の返答ばかり返してくるのだった
「おい、あのレジさんとっても暗いよな?」
「あぁ~あんな無愛想なのかまわないで良いんじゃない!」
俺はバイト仲間とこう言い合っては
いつしか彼女と距離を置いて傍にも近寄らなくなっていった
ところがある夜
珍しくオーナーがバーを訪れた時のこと
彼が店内を巡回し従業員達に声をかけ終え
最後にレジの前に立ち寄って彼女とヒソヒソと話しをしているのを
偶然にも見かけたのだが
彼女の表情はまるで別人のように媚を含んで明るく輝き
オーナーに向かって華やぐような艶っぽい声で囁いていたのです
「へぇ~!!女っていうのはこうも変わるものなのだなぁ・・・」
そっと彼らにバレないようにバーカウンターの中に戻ると
暫くの間、尻の青い俺は頷きながら独りしきりに感心していたものだった
今にして思えば彼女は一切の情念を内に秘めながら
彼好みの髪型、化粧、服装などなど
そのすべてをオーナーに捧げていたのかもしれませんね
今回の選曲は Foreigner 「waiting for a girl like you」
さてさて既にあなた好みに
染まってくれるような女性は見つかりましたか?